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『何故、歯をみがくのですか?』 小野 喬
12. 知覚過敏症と歯肉退縮の関係について。
歯周病を指摘された方は必ず歯ブラシの使い方と痛い思いをして歯石を除去されたと思います。その後多くの方が急に冷たい水がしみるようになったことを経験したでしょう。
中には「良くなるはずなのに、なんでこんなにしみて痛いのか。かえって悪くなっているのではないか」とおっしゃる方もおります。
歯石を除去する前に「除去した後に水等にしみるようになりますよ」との説明は “ 知覚過敏症 ” になることを指しています。この言葉は歯ブラシや歯磨き剤の TV でもコマーシャルの中で使用しているのでご存知の事と思います。
では何故歯周病の治療をし、良くなってくると知覚過敏症になるのか?。その理由を説明するのには、簡単に歯周病の病態を説明しないと理解できません。
これまで多くの場所で、何気なく歯周病を図で説明されているのを目にしていると思いますが、改めて簡単に図を?に示いたします。
歯周病は歯頚部(歯と歯肉の境目)にプラークと歯石が沈着し、そこに歯周病を引き起こす菌が繁殖し、歯肉が慢性的に化膿した状態になり、その結果歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けて消失し、歯がぐらぐらになって抜けてしまう病気です。
図のように、歯肉の慢性炎症の状態が長く続くと、歯肉の頂上と歯槽骨まで隙間が生じてきます。それが洋服のポケットに似ているので歯周ポケットと言います。歯周病の検査の時「何番何ミリ」と言いながら調べているのが歯周ポケットの深さを測定しているのです。この歯周ポケットが深ければ深いほど歯周病は進行しており、歯の動揺度も大きくなってきます。
プラークと歯石をきれいに取り除くと ? に示した図の用になり、ポケットの中は本当の隙間になります。この状態から丁寧にブラッシングを行うと歯肉に対してマッサージ効果が働き ? に示したように歯肉が引き締まり健康な状態になり、上顎では上のほうに競り上がり、下顎では退縮し上下の歯が長くなったように見えます。舌で歯をなめてみると歯と歯の間、歯頚部の隙間が広がったのが分かります。
歯周病に罹患した後、健康になった歯肉はみんなこの様になります。その結果、今まで口の中に露出してなかった歯根部分が見えて来ます。この歯根部分の露出することが “ 知覚過敏症 ” の原因の一つとなります。
この現象を理解してもらう為に、歯の簡単な構造について説明します。
上図に示したように、歯根の表面が露出すると歯根の表面を覆っているセメント質は軟らかいため、歯石を除去する時に一緒に削り取られてしまいます。その結果肉眼では見えない直径 5 ミクロン位の “ 象牙細管 ” が露出してきます。この象牙細管は神経と繋がっていますし、管の中は液体で満たされていますので、冷たいものを口に含むとこの細管中の液体が少し縮みます。又酸っぱい物や甘いものを食べると、酸っぱさや甘さを薄めるために液体が動きます。それを神経は痛みとして感ずる事が知覚過敏症の原因となります。
この現象がひどいときは冬の冷たい風に当たっただけでも生じてきますし、歯ブラシの毛先が当たった時にも、その刺激が痛みとして感知されてしまいます。
知覚過敏症はむし歯ではありませんし、軽い症状の時は放っておいても知らぬ間に症状が消失する場合も有ります。このことについては後ほど説明します。
知覚過敏症は歯根の露出だけが原因でなく仕事のストレスから歯を食いしばり、エナメル質部分に目に見えないひびが入る事からも生ずる場合も有りますし、酸っぱいものが大好きで常に口にしている方はエナメル質が解けてしまう “ 酸蝕症 ” によっても生じます。私の患者さんで、レモンが大好きで毎日口にしている方が「歯がものすごくしみる」と訴えて来院されましたが、典型的な酸蝕症でした。歯がしみると感じたら歯科医院を受診してください。
次に、何故軽い知覚過敏症は放っておいても治るか?。
“ 痛み ” は生体にとって一種の危険信号です。その刺激に反応して痛みを遮断しようと反応して、歯髄(神経)が入っている部分の象牙質がその厚みを増してきます。これは生体の防御反応ですから、ブラッシングの仕方が適切でなく新たな歯根面が露出すると知覚過敏症が出現します。歯がしみたり、治ったりを繰り返すのはこのためです。
しかしむし歯ではないからと言っても、しみるときは歯科医院で相談し適切な処置を受けたほうが良いでしょう。
知覚過敏症は悪化すると歯の神経を取らないと直らない場合も有りますので、充分な注意が必要です。
先にも少し述べましたが、歯肉が健康になり退縮状態になると歯の形から必然的に歯と歯の間、特に歯肉に近い部分に大きな隙間が生じてきます。多くの方が「食べ物が挟まってしょうがない、息が漏れる、見た目が悪い」等訴えますが、これも慣れますので口の中の健康を考えて少し我慢をしてください。見た目の悪さを気にされる方はその後の処置や “ 人工歯肉 ” 等何らかの方法が有りますので相談して下さい。
この様な状態なればなるほど適切な食後のブラッシングは必要であると理解してください。
では「食後の歯磨きについて、何時が適切なのか」と聞かれます。
食後直後は食物によりお口の中が酸性にかたむき、エナメル質の一部が傷ついた状態になります。この傷が唾液中のカルシュウム等で修復されますので、食後はお茶やお水で口の中の pH を中世に戻した後30分から一時間後くらいにブラッシングを行うことが推奨されています。
食後にキシリトールガムを咬むことも “ 歯の修復 ” に良いといわれています。
☆次は最終話 → 13.終わりに
≪INDEX≫
5. 歯ブラシの毛の材質、硬さ、植毛部分の大きさと歯磨き時の出血について…
10.電動歯ブラシと音波歯ブラシ(ソニックケアー)並びにウォーターピックについて…
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